平凡な小劇団であっても公演までは嵐のような日々が続く…。女優であり自ら劇団を率いた著者が描く芝居の持つ魅力と魔力!
中学一年のとき初めて演劇部の「人形館」という舞台を見て衝撃を受けた。
だってさっきまでのクラスメイトが今舞台にたってるし。
奇妙な感じ。
それから音楽やりながらだったり、社会人やりながらだったり今でも芝居から足を洗えない。
バンドをやっていたころが「お酒に酔った状態」ならば、
芝居は確実に「覚せい剤中毒」ですから。
この本は一つの劇団が芝居を一本終えるまでの淡々とした話。
ゼラ、だとか ゲネだとかそういう言葉を読むだけでなんだかウキウキしてくる。
本に書かれている自分を読んでいるかのようなんだもの。
表紙の写真さえ 私が何度も何度も足しげく通った懐かしい小劇場だ。
劇団員は色々な人がいる。
バイタリティは普通の人の何倍もあるけれど、感覚がとても異様だ。
誰とでも寝るヤツ。ノルマのために援助交際をする奴。金銭にだらしないヤツ。
私は芝居が好きだったけれど、そういう感覚が麻痺してる奴が一番嫌いだった。
途中から涙が止まらない。
だってこの本は芝居をやってて一番苦しくて悲しかったことを
ついさっきのことのように肌で蘇らせてくるから。
一般人の書くレビューを読むと実に淡々としてつまらない話らしい。
作者はいかに芝居の世界を一般人に伝えるかのように説明しているけれど、これは芝居人が読む話なのかもしれない。
最後の文章にもっと涙が止まらなかった。
でもその涙は「芝居が辛かった涙」ではなく
「辛かったけれど 好きで好きでたまらなかった涙」に変わっていた。
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