重力ピエロ

2005年7月27日 読書
ISBN:4104596019 単行本 伊坂 幸太郎 新潮社 2003/04 ¥1,575

半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。春は、私の母親がレイプされたときに身ごもった子である。ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。連続放火事件と謎の落書き、レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯し…。


台風が過ぎ去り、空は抜けるような青。
日差しが強すぎて、視界に入るものすべてのエッヂがはっきり浮かびあがる。
こんな陽気と湿気では日陰さえ涼しさを与えてはくれず、深く深呼吸しても胸が苦しい。
・・・・耐え切れず、ビルの庭にある砂利を引いた小川に頭から飛び込みたい気分に。

浅すぎて刺さります・・・。

久しぶりに分厚い読み応えのある本を数冊。
うーん・・・・なんてこの登場人物たちは魅力的なんだ。
泉水と春。「あら、英語にすると二人ともspringなのね?」
何故だか判らないけれど、このセンスでもう虜。

母がレイプされて出来た子というのに、禁欲的な春。
セックスを罪悪と感じ、人の欲望を悪しきものと感じる。
ストイックで女性に冷たくて、頭脳明晰。
私じゃなくても恋焦がれてしまうよね。こんな彼が愛するのはどこの誰なんだろう?と思うもの。

登場人物が皆素敵なんだよねぇ。
私は回想でのみ出てくる母が好きだった。
病弱でたおやかな人を想像していたら、明るくて度胸があってそれでいて母であり女なのだ。
競馬に子供二人を連れていく話がすごくいい。

この話は事件に絡ませた理想の親子のお話なんだね。
父も母も兄弟二人も全員が魅力的でウィットにとんだ話ができる人。

「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」

ほんとそう。でも人はそれをすることが、とてもとても難しいの。

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