ISBN:4344007476 単行本 豊島 ミホ 幻冬舎 2005/03 ¥1,470
まるで青空廊下のような話だった。
私の行っていた高校は教室のある生徒棟から音楽室などのある特別棟までの廊下に天井がなく、まるで屋上のような風貌だった。
誰が名づけたのかそこはみんなから「青空廊下」と呼ばれていたのだ。
通行することは勿論、お昼にはそこでお弁当を食べたり、放課後は色々な部活の練習場所になったりする。
晴れた日には休み時間みんな青空廊下で話したり、遊んだりと教室よりもその印象が強い。
私がベースを背負って学校に来る彼を見ていたのもここだったし、その彼と別れたのもここだ。
ひとつの高校に通う色々な生徒の色々な日常。
短編集でその個々のストーリーがまるで輪唱のように重なり合ってる。
あるひとつの話の主人公が次の話では傍観者だったり、ただ視界に入るだけの人だったり。
高校時代、生徒の数だけドラマがあって、それを多角的にショートストーリーにしたのは面白いなぁ。
その一編に出てくる、「私はこの耳で生きていってやる!」と虚勢を張って、男子に好きともいえず、人とはずれたマニアックな音楽をあさるあの子。あぁ。これは私だ。
クラスで人気のある可愛らしいキャーキャーいってる子たちを少し内心妬みながら、口では馬鹿にしつつ学校行事も「馬鹿馬鹿しい!」なんて子供じみたかっこつけで出なかったりした。青かったな。私。
卒業して5年ほどたったある日、私はこの青空廊下を思い出し、たまらなくなって文化祭に出向いた。
高校生の出店や出し物なんて興味ない。
青空廊下の思い出を味わいにいったのだ。
田舎にある母校のあの開けた空間にいった瞬間、目を疑った。
だってあの人がいたんだよ!
ここで6年くらい前に別れた人がさ。
私の記憶の中では彼があまりにもこの風景に馴染みすぎてしまって、「あれ?なんで制服きてないの?」
なんてトンチンカンなことを彼に思わず語りかけた。
その瞬間卒業して5年過ぎたことがまるで嘘のようだったし。
話を聞くと彼もここが懐かしくて一人でフラリと来たらしい。
何もなかったかのように、私は青空廊下で彼と6年前と同じように話をして、そして別れた。
そしてそれきり。これが私の「檸檬のころ」の結末。
(ヒミツ日記に続く)
いっそ痛いと思った、その痛みだけは思い出せた。かっこ悪くて、情けなくて、でも忘れられない瞬間がある。田んぼと山に囲まれた、コンビニの一軒もない田舎の県立高校を舞台に綴る、青春の物語。
まるで青空廊下のような話だった。
私の行っていた高校は教室のある生徒棟から音楽室などのある特別棟までの廊下に天井がなく、まるで屋上のような風貌だった。
誰が名づけたのかそこはみんなから「青空廊下」と呼ばれていたのだ。
通行することは勿論、お昼にはそこでお弁当を食べたり、放課後は色々な部活の練習場所になったりする。
晴れた日には休み時間みんな青空廊下で話したり、遊んだりと教室よりもその印象が強い。
私がベースを背負って学校に来る彼を見ていたのもここだったし、その彼と別れたのもここだ。
ひとつの高校に通う色々な生徒の色々な日常。
短編集でその個々のストーリーがまるで輪唱のように重なり合ってる。
あるひとつの話の主人公が次の話では傍観者だったり、ただ視界に入るだけの人だったり。
高校時代、生徒の数だけドラマがあって、それを多角的にショートストーリーにしたのは面白いなぁ。
その一編に出てくる、「私はこの耳で生きていってやる!」と虚勢を張って、男子に好きともいえず、人とはずれたマニアックな音楽をあさるあの子。あぁ。これは私だ。
クラスで人気のある可愛らしいキャーキャーいってる子たちを少し内心妬みながら、口では馬鹿にしつつ学校行事も「馬鹿馬鹿しい!」なんて子供じみたかっこつけで出なかったりした。青かったな。私。
卒業して5年ほどたったある日、私はこの青空廊下を思い出し、たまらなくなって文化祭に出向いた。
高校生の出店や出し物なんて興味ない。
青空廊下の思い出を味わいにいったのだ。
田舎にある母校のあの開けた空間にいった瞬間、目を疑った。
だってあの人がいたんだよ!
ここで6年くらい前に別れた人がさ。
私の記憶の中では彼があまりにもこの風景に馴染みすぎてしまって、「あれ?なんで制服きてないの?」
なんてトンチンカンなことを彼に思わず語りかけた。
その瞬間卒業して5年過ぎたことがまるで嘘のようだったし。
話を聞くと彼もここが懐かしくて一人でフラリと来たらしい。
何もなかったかのように、私は青空廊下で彼と6年前と同じように話をして、そして別れた。
そしてそれきり。これが私の「檸檬のころ」の結末。
(ヒミツ日記に続く)
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