ISBN:4104750018 単行本 垣根 涼介 新潮社 2005/04/01 ¥1,575

リストラを専門に請け負う会社に勤めている真介の仕事は、クビ切りの面接官。昨日はメーカー、今日は銀行、女の子に泣かれ、中年男には殴られる。はっきり言ってエグイ仕事だ。それでもやりがいはあるし、心も身体も相性バッチリの恋人もいる。そして明日は……? 笑って唸って泣かされる、恋と仕事の傑作エンタテインメント!


女子はいつでも突然のキスに弱いものなのです。

それはダムの決壊にすごく似てて、それまで「こんな奴好きになんかなるものか!」
という意地が一気に流れ落ちて放出する。

もし相手が嫌いならば女子は「突然のキス」を出来るエリアに男子を入れないものね。
しかし今回もライトに登場するラブシーンにはやはり萌えない。
ラブシーンにはムードとロマンチックさを要求する私ですので、キスを「口を吸う」って表現する時点でもう既に心が離れます。
強引でクールな主人公、真介は素敵なんだけどさ。

ミクシのファンコミュ人数などを見ていると人気はまだまだだなぁと垣根さんですが、私の中では安心して読める作家。
多分にびっちり風景から人物まで書き込んだ文章が好きなので、どれを読んでも平均値以上の面白さがある。
(だから期待度も高いので少しでも好みに合わないとがっかりもするんだけど・・・)

初めての作家の読む本を選ぶとき、大概その作品の評価やあらすじなどを軽くリサーチしてから読みます。
垣根さんにいたっては不要!!だって面白いもん。絶対。
なので今回何のリサーチもなしにバイオレンスを読むファイティングポーズでページをめくる。

「いつ人が死ぬの!?いつ女子が乱暴されるの!?」ドキドキ!!

あれ?最後まで人シナナカッタヨ・・・・?

女子もレイプまがいに乱暴されて、

「もうこんな汚いやつに犯されるのは嫌!でもなんか体がいうこと聞かないの!あぁーすごいイイかもしれない!私は貴方の奴隷よー!!」

ってのもナカッタヨ・・・?

今回垣根さんにとってバイオレンスでないごく普通の小説であります。
今までの暴力シーンを「希望退職を勧告する巧みな会話術」に摩り替え、緊迫するチェスや将棋などのような相手の一歩先を読んでいく駆け引きが非常に面白い。

私事ではございますが、去年業績不振から我が会社でこの小説同様の「希望退職制度」ってのがありました。
この希望退職ってのはあくまでも本人の希望とはいいつつ、きっちり会話側がリストラ社員を絞って、退職を勧告するもの。
それでも「首!」と宣告するのは法律違反なのであくまでも真綿でギリギリと首を絞めていき、本人から「辞めます」といわせるネゴシエーション。

かなりこの本のやりとりは小耳に挟んだ、本物の駆け引きと同じものですな・・・・
サラリーマンの皆様は一度は寒気を感じる本かも。

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