パレット

2005年12月6日 読書
ISBN:433492459X 単行本 前川 麻子 光文社 2005/05/20 ¥1,785

大人じゃないから分かることも、いっぱいある。それぞれの事情を抱える、今どきの優等生でも劣等生でもない少女たちの姿を描く。


私も同い年だった ある日があったはずなのに
記憶力のすごくよい私がどうしても思い出せない。

前回読んだ「劇情コモンセンス」は劇団の淡々とした日常であり、私にとっては過去の追体験だった。
あの時受けた衝撃は、多分本 を読んで感動したものではなく、忘れたくて忘れたくて無理やり封印した芝居人生の破片、私のパンドラの箱を開けてしまったからだった。

今回の話は、現代の渋谷で生きてる女子中学生の話。
好感がもてるのは、決してギャルでなく大人を馬鹿にもしていない、とてもとても賢い美少女二人。

ネガティブかもしれないが、大人になるということは「可能性」という手に握っていた砂がどんどん指の間から零れ落ちていくのを黙って眺めることだと思う。頭脳明晰、容姿端麗な、この二人の手に握る可能性の多さに私は嫉妬するよ。

彼女らは冷静に物事と人を分析していて、物分りがいい子供たちだ。
この達観している様は非現実的すぎるんだけれどね。
しかし子供らしく、何かを手に入れたり手を離したりということを、ものすごく衝動的に行ったりする。
そして全てのことよりも彼氏と裸で抱き合っていることを貪欲に求めて想像したりする。

楽しいことを子供たちから取り上げるつもりは毛頭ないのだけれどさ、中学生からこの幸せの絶頂と安心を味わったら駄目 じゃ駄目 じゃ!

昔、何で読んだか忘れたが、末期がんの患者が女性を買う話。
どんなにお金を持っていても、どんな高価なものを買えたとしても死から逃れることは出来ない。
最後に人が望むことは異性と裸でベッドで抱き合うことだった。
どんな金銀財宝よりも求めるのは人肌。
結局人ってこんなちっぽけなことで至福の幸せを得られるもんだ、と。

可能性を秘めた少女達はまだこの至福を知らなくても、世の中には狂うくらいの楽しみがたくさんある。
だからそっちを少し味わってからにしておいたほうがいいと思うよ。

えぇ、えぇ、嫉妬とでも何とでもいってくださいな。

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