ISBN:4163239502 単行本 川上 弘美 文藝春秋 2005/05/26 ¥1,100

息がつまるような閉塞空間で私もあなたとどこかへ行けたらと毎日思う。

ドライブが嫌いだという女子にいまだかつて会ったことがない。
ハンドルを握る人間が絶対的な主導権も持つ「車」というものは、相手に対して絶対的な信頼感を持たないと乗り込む勇気が持てないもの。

窓を全部閉め切って大声で歌うのも楽しい。
車中ならば普段より100倍 身を焦がすキスも出来る。

日産TEANAスペシャルサイトで紹介されていた8人の作家の「車」によるショートストーリー。
どれも素敵なんだけど、若干話が被るもの(昔の恋人と再会モノ)があるので内容をもうちょっと事前にすり合わせておいて欲しかった。

期待していたのは、石田衣良だけどまったくもっての肩透かし。最近量産しすぎて石田衣良というだけで食いついては怪我するなぁと思いました。

この中では吉田修一の書く夫婦の話が素敵だった。
かくいう私もこの夫婦の妻のように普段こうるさいほど機関銃のように話すのに、車に乗ってしばらくすると、ことりと口をつぐんでしまう。

よく隣の人に「どうして話さないの?」と聞かれる。
私はいつも「よくわからないけど・・」と答えるのだけど、そうだよ。風景に身を委ねてしまうんだ。

最後にほんのり微笑むことのできるショーストーリーたちはどれもサラリと読めるストーリーだった。
あまりにも毒がなさすぎて明日には風に流されてしまいそうな淡い話でしたが。

車大好きな垣根涼介に書かせたならば、きっと日産TEANAを300キロくらいスピードの出る車に改造してカーチェイスをするクライムストーリーだったのにね。


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