ISBN:4087747867 単行本 三崎 亜記 集英社 2005/11/26 ¥1,365

バスジャックブームの昨今、人々はこの新種の娯楽を求めて高速バスに殺到するが…。表題作他、奇想あり抒情ありの多彩な筆致で描いた全7編を収録。


やっと分かった!三崎さんの本を読むスタンスが!
話題のデビュー作「となり町戦争」は、正直どう構えて小説を読んでいいか分からなかったのね。
こう・・・笑っていいんだか悪いんだか・・・ていうのと、ファンタジーとして捉えて楽しむべきなのか、それともリアリティーを求める小説として楽しむべきなのか、どっちつかずで座り心地が悪かったのだ。
ここに来て分かった。(きっと頭の回転の速い人ならば今更?て思うんだろうなぁ・・・)
星新一なり眉村卓のように不可解な世界観をいきなり提示されることを、すんなり受け止めればいいんだ!うん。

今回、そのような異世界の話を集めた短編集。
そう考えてしまえばページはすごい早さでめくれていく。星新一のように最後に上手い!!と思えるどんでん返しや上手なまとめ方をするのではなく、あくまでも異世界を絡めた人間同士の切ないストーリーを描くのが上手なのだ。
収録されている中でも一番短い、たった3ページの物語で涙が出そうになったよ。
そして最後に収録されている「送りの夏」という、田舎のある山荘でマネキンのような生き人形のような動かない人間と暮らしている夫婦やカップルの話。最初ものすごい違和感を感じたこのストーリーが最後には、しっくり肌に馴染んで愛しくなる。
こういうシステムは非現実だけれど、特定のある人間には確実に「リハビリ作業」として必要なんだと、そう感じる作品。
多分、変化することを恐れてる私にも特に必要なシステムだと思った。

コメント

nophoto
kagetora
2006年1月25日15:40

マユタク!(笑

訳の判んない異界にポンと放り出されて、ロクに説明のないまま進行って感じは、確かにマユタクの「ぬばたまの」ってマイナーなファンタジー長編が、まさにそんな手触りだったような。

イマドキの作家で言うと、北野勇作とか?

キリカ
キリカ
2006年1月25日23:14

私が小学生のとき初めて読んだ眉村卓の本が「孔雀の町」っていう、これと似たおかしなストーリーばかりの短編集だったんですよねぇ。

当時はよくわからなくて、何度も何度も読みなおした記憶があります。今思えばそんなに彼にとって代表作でも良作でもなかったはずなのに、なぜにあんな擦り切れるほど読み返したんだか・・・(苦笑

nophoto
kagetora
2006年1月26日14:00

たわいのない話の、奇妙な触感だけで読ませるというか。凄く静謐で、でも揺れてる心…みたいなのの描写が上手いんだよね。短くて、アイディア的には大した事のない作品ほど読んでて楽しいっつか。>マユタク

ああいう作家も希有で、実は平易な内田百間ではあるまいかとおもったりすることがタマーに。

とりあえず三崎亜記は「となり町」を読みたいっす。筒井の「三丁目が戦争です」ネタか〜?って、出た当時回避しちゃったんで(笑

キリカ
キリカ
2006年1月26日22:01

本文中にも書いたようにいきなり「となり町」だと面食らいます。

お勧めはバスジャック→となり町に読んだほうが、しっくり世界観に馴染めるかもですね!

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