愛がいない部屋

2006年1月25日 読書
ISBN:4087747905 単行本 石田 衣良 集英社 2005/12 ¥1,575

都心に暮らす男女、それぞれの愛のかたち。
35歳目前にマンションを買う決意をする独身女性、出会ったばかりのルームメイトに恋心を持つ女、出会い系サイトで知りあった男と情事を重ねる主婦…都心に暮らす男女の心の隙間を描く恋愛小説集。


ここしばらく行っていないんだけど、神楽坂には私が昔いた劇団がよく公演をやった劇場がある。
公演ってのは大小トラブルが常につきまとっていて、あれが足りないこれが足りないと、この小説の舞台「神楽坂」の町を何度も何度も走り回ったのだ。文章の端々に出てくるお店や通りの名前を聞くたびにノスタルジックな気持ちになった。

ひとつのマンションに住む10組の愛の話。

この中でさ、キャリアウーマンの女性がマンションを買う話があって、彼女が言うのね。
彼女は母親が女王様で小さな頃から、褒められたことがなく、「お前はいつも駄目だ、可愛くない。頭が悪い」と言われ続けた。だから大人になって自分を愛してくれる男性が現れ、自分を認め、評価されたとしても信じることが出来ない。
だからマンションを買うことを決める。何かしら自分の人生の「補填」が欲しいから。だって今自分を好いてくれる男性に10年後も愛されてる自信なんかないもの。

今更、母を責める気もならないし、もしかしたら私が都合の悪いことだけフィルターかけて覚えているのかもしれない。
でも、私も小さな頃から褒められた記憶がないんです。
確かに次から次へと興味が移り変わって部屋も散らかすし、口も達者で大人でもかなりムカッとくる子供だった。でも、頭もそこそこよくて、協調性もあったというのに(子供の頃は協調性の塊みたいな子だったのだ)毎日毎日怒られてばかりだった。95点取っても「あんたがどっか抜けてるからあと一問なのに満点とれなかったんだ!」、100点とっても「これが当然なんだから次もこうしろ!」・・・・結局私はさ、どんなに成績優秀でもお友達と上手にやっても跳び箱8段飛んでも怒られてたんだ。
こんな私は未だに褒められ下手。褒められてもニコリと笑ってありがとうといえない。
「きっと社交辞令なんだろう」とか「あわよくば・・・と、私をおだててるだけなんだ!!」だとか、褒め言葉を素直に信じることができない。だって私は頭悪くて、可愛くなくて、うるさい子って洗脳され続けて今だにそう思ってるからさ。
思わず涙したね。そうだよ。信じることなんか簡単に出来ないよね?って。

マンションに住むいろいろな悲しい愛の姿があって、60代でも恋をして、親子の愛や片思い。
石田衣良の書く恋愛模様はいつも好きなんだけれどね、切ない話ばかりで私も切なくなったよ。えーん。

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