優しい音楽

2006年1月30日 読書
ISBN:4575235202 単行本 瀬尾 まいこ 双葉社 2005/04 ¥1,260

なんとなーくサラサラした優しい女性作家の話って自分に合わない気がして避けていた。
最初に江國香織さんを手にとったのって、もう大分前なんだけど起こってる事柄は結構重大な事ばかりなのに、ゆったりとした情景描写や意外に動じない登場人物たちにイライラした。
もっと人間って感情の振れ幅が大きいでしょう?と。
あー、でも考えてみれば、事件を鋭く切り込むことばかりを読者は求めてるわけじゃなくて、そういう風に優しく感じていく物語もあるんだろうね。でも私は小説にエンタテイメントとか激しく揺さぶられる感情を求めていたので、私の求めるところはこの場所にないんだなぁと。

最近、メディアでも瀬尾さんが露出したりして人気があがってきていたけど「あぁ、きっと何も起こらない淡々とした日常」のお話なんだろうなぁと思っていた。だけど本棚に一冊ポツンと置かれたこの本がとても読んで欲しそうに鎮座していたので思わず手にとってしまった。
うん。ありがとう。とってもいい気分になりました。
起こってることはすごく奇抜でありえない設定だし、周囲の人間も最初ブツブツいいつつ馴染んでいってしまってる。
読んでる私も「愛人に娘を預ける馬鹿男」だとか、「収集癖のある女の子がホームレスのおじさんを拾ってくる」ことに驚きつつも、悪いことばかりじゃないのね。などと優しい気持ちになれる。本当ならば殺傷沙汰だからね!?

標題の「優しい音楽」という話がすごく私は気に入って、よく分からない感情のまま女の子に追いかけられる主人公。
この主人公がすごく優しくて彼女が自分を追いかけてる理由を判ってしまったならば、もう少し怒ったり嫉妬したりするだろうにね。彼女たちの気持ちを尊重して、彼女の想うように行動しつづける。

この話たちは現代の「大人の事情」をおとぎ話に変えたものだと思う。
だって人間ってもっと悪意に満ち溢れてることが多いし、こんなに何もかもが上手くゆくことがない。
そう考えると、普通危険な出来事や人間たちの感情にもパズルのピースがはまるように納得いくはず。
少しだけ人を信じたくなった。

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