Wish You Were Here

2006年2月23日 日常
私には3つ上の幼馴染がいた。名前は「リカちゃん」。
モデルみたいにスラッと足が長くて、細くて、物静かでおっとりした子だった。

母親同士が仲良かったので、リカちゃんはしょっちゅううちに遊びにきて、テレビの話を一緒にするのが楽しかった。
しかし、子供時代の3年は大きいもので、リカちゃんが中学に入る頃からあまり遊んだりすることがなくなった。
仲が悪くなったわけじゃなくて、とても自然な流れで。

遊ぶことはめっきりなくなったけれど、リカちゃんの母親からは今リカちゃんが何をしているかはよく聞いた。

リカちゃんは高校を卒業してすぐ食品工場に就職をした。
大人しいリカちゃんは仕事にも人にも馴染めず、会社の人たちにすごく苛められたらしい。
多分おっとりしていて流れ作業なんかですごく周囲に迷惑をかけたのかもしれない。
それからリカちゃんは仕事を変えたけれど、新しい職場でもまた苛められた。

新しい職場にいき、散々に苛められていたリカちゃんはある日「友達が出来た。」そう家族に話して明るくなった。
リカちゃんは新しく出来た友達と本当に仲がよくて、毎日毎晩、電話で会社の愚痴や悩みを相談するようになった。
電話をする時間は日に日に長くなり、時には朝まで話すことも少なくなくなった。

ある日、あまりにも毎晩電話をし続けるリカちゃんに家族は電話料金が不安になり、調べてみた。
電話料金が以前と増えていない・・・・
どういうことだろう?
色々家族は調べた。
でも電話料金もそのまま。リダイヤルをしても、昼間自分が掛けた電話番号に繋がる。

ある日、いつものように電話をしているリカちゃんから母親は電話の受話器を取り上げた。
受話器を耳に当てると「ツーツーツー」という音しか流れてなかった。

リカちゃんは、本当は存在しない「空想の」お友達と数ヶ月毎晩話をしていたのだ。

リカちゃんは、友達が存在しないことを知ったと同時に壊れてしまった。
数ヵ月後、リカちゃんが遊びにきた。
40キロあるかないかだった体重は100キロ、髪の毛もボサボサで、私が話したことのオウム返ししか言葉を話せない。
お菓子とお茶を出してあげると何も言わず、両手で鷲掴みにして、獣のように食べ続けた。

あれから数年、最近少し穏やかな顔になったリカちゃんをたまに実家の近くで見つける。
人ごみでいきなり奇声をあげたりするし、体重も100キロのまま。
でも簡単は会話と簡単な買い物は出来るようになったみたいだ。
リカちゃんが幸せな気持ちでいてくれればそれでいい、今はそう思う。

奥田さんの本を読んで、リカちゃんのことをふと思い出した。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索