罪と罰
WOWOWでの舞台中継を鑑賞。
「罪と罰」の初演は95年。
これは初期の野田地図作品で私は一番好きな作品です。
初演時、あまりにも感動した私は高いチケットにも関わらず何度もコクーンに出向いたのだ。

オリジナル主演は天下の大竹しのぶだった幕末の女剣士「三条英」は松たかこに勤まるだろうか?
そして英の妹役、「とも」は初演ではつかこうへいさんのところのエース、平栗あつみ、それが演技経験のほとんどないモデルの美波にどれだけつとまるのだろうか?
しかしいつも杞憂なんだよな。
野田秀樹という演出家は多分日本一女優を育てるのが上手な舞台家だから。
舞台はアラが目立つのでテレビでの大根役者はさらにアラが目立つ。
松たかこは立派な実績があるにしろ(にしてもオイルの演技は秀逸)、どんなに演技経験のつたない役者を板に乗せても見事な女優にするんだよなぁ・・・。今回の美波に関しても、以前出演した山口紗弥加にしても正直ワタクシびっくり。深津絵里も野田地図に出てから芝居がものすごい上手になったんだ。
男優はもう黙っていても万遍ないパワーを発揮してくれる古田新太や右近健一。段田安則はかつての野田秀樹の劇団、遊眠社の看板だった俳優です。

残念なことに、この「罪と罰」は初演は通常通りの舞台配置なのに比べ、今回は円形劇場に舞台を改造した演出。360度からみられることを計算した演出は映像だと非常に見難い。俯瞰アングルなどで苦労しているのはわかる。物語のストーリーを追ったり、役者の表情を見るのに苦労はしないけれど、野田作品は引きで全体の空間美を感じて何ぼなんだから魅力が伝わりにくいよなぁ・・・しかも初演時行われたように、この舞台はシーンに出演しない役者が必ず脇に控えていて、(楽屋に戻らず舞台の隅に座っている)ドアを叩いたり扉を開け閉めする効果音を役者が縄やカバン、ペットボトルなどで音を出すのだ。「効果音を出してる役者」までも演出のひとつで客にみせることを計算しつくされているので、それがまったく見えないのは非常に悲しい。

初演の感動はそのままで、松たかこの三条も非常によかった。心身ともに女だのに、その性を嫌い雄雄しくしている様が逆に女らしい松たかこにぴったりだったのかもしれない。
好みをいえば三条とバランス的に危うくもラブに落ちかねない相手だった才谷は初演の筧利夫のほうが適役だったと思われますが・・・。(松たかこと古田新太ってどうにもラブに転がらないよね・・・)

もう芝居はいくら書いても語りきれないほどで、姑よりもコウルサイ。
気になる方はもう一度再放送する予定なので是非名作を堪能を。もしくはDVD貸すよ!>お友達へ。

コメント

kaj
kaj
2006年4月30日4:45

あ、それ、それぞれの女優さんにとっては、幸せなことかどうか疑問です。往年の「つか芝居」に参加してしまった女優さんは皆、その後、同じ芝居しかできないようしつけられてしまいましたから(特に大竹さん辺りもその一人のはず)で、野田も同じです...というか、彼の方が徹底しているかな。彼は役者の個性を必要としないのです。特に遊民舎上がりの女優さんが残らないのも、その所為(男優さんは、立ち上げ期の参加者は、かろうじて凌いでるみたいですが、当時の花形の一人であった松っちゃんは...)私は、野田マップになってからは、殆ど見なくなってしまいました...歳なんでしょうかねぇ(笑)

キリカ
キリカ
2006年4月30日16:21

舞台の女優で生き残ってる方は野田さんのところに限らずほとんどいないと思います。(ワハハなどは女優として生き残ってるが疑問ですしね・・・)
私は舞台女優が生き残らないのはずっと容姿のせいだと思ってました。やはり映像の主演では演技力よりも容姿を求められることが多いので舞台女優は映像では生きていけないと。
そういう見方があるのですねぇ・・・・。役者の個性ですか・・・自分がやってたにも関わらず考えたことがなかったです。勉強になりました。
野田地図の初期のほうの作品は私は好きですよ。
最近はめっきり新作を書かなくなってしまい、遊眠舎当時のと野田地図初期のリメイクしかやってませんが・・・
私も実際劇場に足を運ばなくなりました。
その原因は、芸能人を多用してチケットが取りにくくなったことと、客の質が非常に悪くなったことです。特にジャニーズが出てるお芝居のお客さんの質はいうまでもないです・・・

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