ISBN:4048736116 単行本 奥田 英朗 角川書店 2005/06/30 ¥1,785
僕の父さんは元過激派とかいうやつで、いつも家にいて小説を書いている。学校なんか行く必要ないとか言うのだけれだけれど……。少年の視点を通して、変わり者の父に翻弄される家族を描く、長編大傑作!

アタシの中の何か眠ってるものがフツフツと蘇るような感覚のする本だった。

今から考えると少し恥ずかしくて、でも当時は大真面目だった。
砂が水を吸うがごとく知識を吸っていた高校生から大学にかけて私は非常に思想的に偏っていて、ベースのしぃちゃんと何か大きなことをしてやろうといつもたくらんでいた。
ドイツ映画のレボリューション6という右翼の学生運動テロリストの映画があるんだけれど、私としぃちゃんは、あの映画のメンバーそのものの学生運動や思想かぶれのパンク野郎で時代を変えたいとか一泡吹かせたいとかいつも思っていた。
実際にしぃちゃんは新聞沙汰になるようなパンキッシュな事件を何度も起こして、そのたびに警察に追いまわされ、いつも私と第四帝国やUボートについて騙って、いつかナスカの地上絵を守りに行こうよとか本気で話してたんだった。
アタシとしぃちゃんには同調してくれる仲間がほとんどいなくって、二人で熱くなったけれど結局何も起こせず大学を卒業して普通の人になった。でももしも、いく大学が変わっていたならば、もしも何十年か先に生まれていればマチガイなく私たちは神林美智子かこの小説の主人公の父、上原一郎を目指したに違いない。
この上原一郎っていうのがすごくかっこいい。
185センチの大男。顔が濃くて沖縄生まれで元過激派。
普段家でごろごろして、国民年金と取り立てと戦い、息子の小学校に殴りこみにいく。
勝手に彼を宇梶剛士で想像して読んだ。
家族よりも個人を大事にしていて、何より奥さんを愛していて、奥さんも彼を愛してる。
こんな破天荒なオヤジ、いい迷惑かもしれないなと序盤は描かれるのだけれど、都会という鎖から解き放たれた西表篇の後半になってから元来からの意思の強さとか生命力の強さが生きてくるんだよね。都会での処世術なんて西表ではまったく役に立たないから。
そして確固たる信念がまだいい。

私は都会大好きっ子だ。
私の求める幸せは都会でしか味わえないことが多いからで、ライブも舞台も映画も本も、ある一定以上の都市じゃないとすぐ手に取って楽しむことができない。だから一生都会から離れられないだろうなと思っていた。
しかしこの小説のように南の島に人を変える何かがあるならば一度味わってみたいと感じた。
こんなに世俗まみれの私でも健康的な人に変われるだろうか??

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