さくら

2006年9月8日 読書
ISBN:4093861471 単行本 西 加奈子 小学館 2005/02 ¥1,470
スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ――。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた――。

作者の西加奈子さんをテレビでみたけれど、とても素敵な人だった。
吉田美和みたいなお洒落なんだけど、着飾ってなくてケラケラ笑うナチュラルでかっこいい人でした。

そんな彼女の作品をやっとやっと読めました。
とにかくこの作品とっても人気で手元に全然来なかったのです。ま、その間にたくさん面白い本を読んだのでそれでよしとしますが、とにかくもう半分読む気持ちがへたれていて、やっと届いたけれど他の面白い本たくさん抱えちゃったから読まなくてもいいかなぁなんて思ってました。
でもやっぱり半年も待ったんだし、最初だけちょこっとページめくってみようかなぁとか思ったら最後まで一気読み。結構な厚さなのに一日で読めてしまった。

季節や毎日の日常の情景描写がとても美しくて残酷な現実が待っているというのに美しい風景は続いている。
誰でも実感したことがあると思うけれど、辛いことや悲しいことに直面したとき、もう自分はおしまいだなと感じたとき世界も終わる気がする。だけどそんなこととは関係なく空は青くて、木は緑でみずみずしく花も美しく咲いて、太陽はさんさんと照りつける。
昨日と何も変わらず、明日も多分かわらない毎日が自分以外のところで流れていくのだ。
それが憎憎しく思えたり、森羅万象の全てが自分の現実と懐に抱きかかえるような気持ちになる。

この家族の直面した現実はたやすくない。
だけど、可愛くない犬の「さくら」を中心に誰の上にも同じスピードで過ぎていく時の流れを受け止めていかなければならない。
後半まとまりきれてない印象ありましたが、文体がとても綺麗で西さん同様さらさらしていてとても楽しかった。いい本でした。

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