ひとり日和

2007年11月24日 読書
ISBN:4309018084 単行本 青山 七恵 河出書房新社 2007/02/16 ¥1,260
人っていやね......人は去っていくからね。
20歳の知寿が居候することになったのは、 母の知り合いである71歳・吟子さん
の家。
駅のホームが見える小さな平屋で暮らし始めた私は、キオスクで働き、
恋をし、吟子さんとホースケさんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。

私が読んでるというだけで痛々しいタイトルの「ひとり日和」
ひとり最高ー!フットワーク軽くなるし(出不精になる確率も高いが)なにしろ気楽というものです。

えーっと、この小説とはまったく関係ありませんが、今回芥川賞をとった作品を図書館で半年くらい前に予約していたのですが、本当に忘れた今頃届きました。で、一気に読んだわけです。

作者はとても若いのに情景や心理描写がとても上手で、女性の心情などの観察眼が素晴らしい。
主人公が他人の何気ない行動や言葉に劣等感を刺激されてイライラする様子なんて、それをストレートに表現しないのにとても共感を呼ぶのだ。何歳になっても女性は女性で老人になっても(老人だからこそ)若い自分より素敵な暮らしなんて!とジェラシーを感じる様子がいいなぁ。

少々個性的な人に囲まれているものの、淡々とした日常を送っている主人公。
でも食べ物や日常の描写がきっちり描かれているので、この小説はとても魅力的なんです。芥川賞らしい作品でありますね。

余談ですが、最近1000万人が泣いたとかいう若者に人気のケータイ小説というものを読んでみたのですが、なんつうか・・・
★や♪を多用した文章で中身が何もない。主人公がどんな学校に通って、何を考えているのか。そしてどんな毎日を送っているかなど何も想像できない。とにかくドミノ倒しみたいに主人公に不幸が襲い掛かって、その主人公にとって人生で一大事の不幸でさえも、情景が何も描写されていないのです。多分、読書をしない中高生の層はそのスカスカの行間を、自分の生活とだぶらせて心理を主人公をマッチングさせて同情してるんだろうなぁって思う。例えば何も描写のない主人公の通う学校は、自分の通う学校での出来事と自動的に頭の中で変換して小説を読んだりしているんだろうなぁ。そうすれば小説の中の出来事がすごく身近なことに感じるもの。
そう考えるとケータイ小説って通常の小説を違って、読者が話を読んで想像する個々のゴール時点が全て違う気がする。

ま、それがいいとか悪いとかではないし、ケータイ小説が読書への入り口を広げてくれるならばそれでもいいなぁなんて思っていましたが。最近の若者の描写力ってこんなもんなんだろうなぁ・・・なんて失望していたけれど、同世代のこの作家のように見事な情景描写が出来る人をみるとまだまだ日本人も捨てたもんじゃないなぁっと安心します。

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