ISBN:4334924727 単行本 荻原 浩 光文社 2005/10/20 ¥1,575

元エリート銀行員だった牧村伸郎は、上司へのたった一言でキャリアを閉ざされ、自ら退社した。いまはタクシー運転手。公認会計士試験を受けるまでの腰掛のつもりだったが、乗車業務に疲れて帰ってくる毎日では参考書にも埃がたまるばかり。営業ノルマに追いかけられ、気づけば娘や息子と会話が成立しなくなっている。
ある日、たまたま客を降ろしたのが学生時代に住んでいたアパートの近くだった。あの時違う選択をしていたら…。
過去を辿りなおした牧村が見たものとは?


「明日の記憶」が渡辺謙主演で映画がそろそろ始まる荻原浩の作品。
残念ながら受賞は逃してしまいましたが、先の直木賞候補になりました。

先日「マドンナ」でサラリーマンの悲哀を見て、ショッパイ日常だなぁとか言い放ちましたが、こっちはもっと執拗にショッパさが描かれてます。本当もう身も心も所帯じみた気持ちになります。あーやだやだ。
エリート銀行マンが失言で窓際に追いやられ失職、つなぎの仕事として始めたタクシー運転手。エリート銀行時のプライドも捨てられず、だけど新しい仕事も上手くいかない。そんなとき彼は自分のよかった時代を思い出して妄想にふけるのだ。
人生の岐路は一生に何度となくあって、そのとき自分が選ばなかった「もうひとつの人生」を思う。

あぁー正直さ、私だってやるよ。辛いときとか特にさ。
あの時こうしていたら、自分には素晴らしいもうひとつの人生が待ち構えていて成功してる自分を思い浮かべる。
でもさ、私にとって小説を読む行為というのは、「もうひとつの人生」を思うのと近いのだ。
主人公に思いを馳せ、自分が同じ生き方をしているのかのように空想にふける。
だから小説の主人公が、あまりにもショッパイ日常だと、ほんと悲しくなる。見たくないなぁ・・・
けれど、この本が見たくない現実ばかりで悲しいかというとそうでもなくて、主人公がその妄想によって、不思議と状況が好転していく様だけは心地よい。そして彼はエリート当時見えなかった、大事ななにかをどんどん掴んでいくのだ。
ISBN:4403670199 コミック 久世 番子 新書館 2005/09 ¥672

切なくも心暖まる作品を描くマンガ家、久世番子。
実は彼女にはもうひとつの顔があった!
ある時は自分の本を勝手に大量に発注し、ある時はマナーの悪いお客に呪いの電波を送り、ある時は注文した本が届かないと暴れる。
そう、彼女は「暴れん坊本屋さん」だったのだ!!
マンガ家兼書店員の久世番子が本屋さんの本音や裏話を描いた赤裸々エッセイコミック登場!!

この本を出版してる、主にBL系出版社、新書館の場所が本屋でどこだかわからん!!
以前、宙出版のこうの史代の漫画をを買ったとき書店員に「あぁー耽美な男の子同士の漫画ね!!」(実際はにわとりの漫画でした)と大声でいわれて赤っ恥かいたことがあるので自力で探そうと思いましたが、やはり見つからず、段田安則似の極めて大人しそうな店員に声をかけました。

私 「あの・・・新書館の本はどこですか?」

段田 「新書館・・・うちは少ししか置いてないんですよね・・・・」

私 「えーと・・・『暴れん坊本屋さん』ていうんですけど・・・」

ここで段田の目がキラリと輝く

段田「あ、それは、ここです!この場所です!お客さん!この本はね!うちの店には絶対ありますよ!絶対に仕入れなければならないんです! なぜならば・・・」

「すいませーん」(遠くで店員を呼ぶ客の声)

段田「あ!はーい!」  パタパタパタ・・・・(本を押し付けて私から遠ざかる段田の靴音)

えええええ??
段田〜待って!いかないで。教えて!その話の続きを!!

なに?なんなの?なんで仕入れてるの?なんかこの本と関係あるの?
未だ、その書店でこの本がマストなのか謎は解けぬまま不完全燃焼です。

***

本に囲まれて仕事するなんていいなぁと子供の頃から憧れていた書店業。
いやぁ・・・何はなくとも腰いわすね・・・(涙
確かに本ってすごく重くて、自分の家で積み上げられた本を移動するときにその重みにびっくりする。
それを毎日毎日送られてくるダンボールをあけては積みあけては積み。
漫画は全部ビニールで包装して、並べ。そして返品本はすべてそのビニールをやぶって出版社に送り返す。
あぁ・・・つらそう。地味・・・
今、仕事で毎日私宛てに送られてくる設計書のダンボール数箱を開けてさばくのさえうんざりしてるのに・・・

書店員って華麗にカバーをつけたり、場所を聞かれた本の場所を颯爽と案内するだけじゃないんだね・・・(当然です)
まーしかし客の曖昧さを色々紹介されてましたが、私から言わせれば書店員のほうも十分曖昧な方がいます。
2巻ではそんな書店員も紹介されてるそうな。
本好きにはたまらない裏事情本でした。

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